株式会社の種類株式
平成17年に制定された会社法により、株式会社はいろいろな種類の株式を発行することができるようになりました。
会社法が定める事項は9個ですが、組合せによって多彩な種類株式の発行が可能になります。
種類株式は、資金調達や事業承継のための活用が期待されています。
会社法が定める基本的な種類株式
株式会社は、下記の点について内容の異なる2種類以上の株式を発行することができます。
- 剰余金の配当
- 残余財産の分配
- 株主総会において議決権を行使することができる事項(議決権制限株式)
- 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(譲渡制限株式)
- 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること(取得請求権付株式)
- 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(取得条項付株式)
- 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること(全部取得条項付種類株式)
- 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(拒否権付株式、俗に「黄金株」)
- 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること(役員選任権付種類株式)
組合せによる多彩な種類株式
会社法は基本的な9項目を定めておりますが、これらの組合せで様々な種類株式を発行することが可能です。
例えば、次のような例が考えられます。
- 剰余金の配当や残余財産の分配については優先権が認められるが、一切の議決権がない株式
- 拒否権付だが、当該株主の死亡を条件(取得条項)として会社による強制買取りが可能である株式
種類株式による資金調達
株式会社が資金を調達する手段は、融資や助成金だけではありません。
法律上は、出資(直接金融)による資金調達も可能です。
とは言え、出資は非常にハイリスクであるため、新しく設立する株式会社が出資を受けるのは容易ではありません。
しかし、株式に取得請求権が付与されている場合、出資者は、自分から会社に対して株式の買取りを請求し、投下資金の回収を図ることができます。
つまり、出資者にとってのリスクが大幅に軽減されますので、取得請求権付株式を活用することにより、出資してもらえる可能性が上がります。
また、配当優先権を付与する、譲渡制限を付けない等により、出資のハードルを下げることもできるでしょう。
まだまだ容易ではありませんが、今後は種類株式を活用した資金調達も検討する価値があります。
種類株式の設計・運用は司法書士へ
種類株式は、設計・発行してそれで終わりではありません。
取得請求への対応や、取得条項発動の際などは高度な法律知識が求められます。
また、種類株式を発行した場合、通常の株主総会の他に種類株主総会の開催が必要になる等、会社運営に関する法務手続も複雑になります。
種類株式を発行する株式会社を設立する場合には、専門家である司法書士にお任せください。